
WARNINGS:FINDING CASSANDRAS TO STOP CATASTROPHYESは、9.11、カトリーナ、第二次イラク戦争、アルカイダとISISの台頭、エボラ出血熱やHIVのようなウィルスの出現などに対するインテリジェンスの生産の現場で働いてきた著書達による「警告学」に関する書籍です。
後になれば、なぜ予見できなかったかと言われる多くの事象も、実は予測自体はなされ警告も発せられていたことが多い。しかし、多くの警告は無視されるか、十分な反応が得られずに終わる(彼らはそれをカサンドラ・イベントと呼ぶ。カサンドラとはギリシャ神話に登場するトロイの美しい王女。彼女はトロイの転落を見る能力を与えられるが、トロイの人々は彼女の言葉を嘲笑い無視する。そして最終的に彼女は予告した悲劇の犠牲者の一人となる)。
正しく生産されたインテリジェンスが伝達されないこともある。一方で、間違ったインテリジェンスが伝達されてしまうこともある。
組織にとって、今後不可欠と評価されるデータサイエンス部門とは何でしょうか。オペレーション効率を上げることも大切です。施策のROIを高めることも大切です。しかし、データを扱う部署として組織活動のリスクを評価し、リスクを管理すべき意思決定層へリスク・インテリジェンスを伝達することの意義や役割については、あまりに軽視されていないでしょうか?
組織に欠かせないデータサイエンス部門とは、AIを含めた単なる技術ツールの提供だけではなく、組織にとっての脅威の警告を期待される、つまりインテリジェンス機能を有する部門となることではないでしょうか?
この書籍では、1990年のサダム・フセインのクウェート侵攻、ハリケーン・カトリーナの前にルイジアナ州で何が起こっていたか、そしてここ日本における津波と原子炉のメルトダウンの同時災害についてのケース・スタディが続きます。
カサンドラ・イベントを避けるための知恵を歴史から学び、今後、データサイエンス組織に真に必要とされるケイパビリティの探索を始める意義を理解するのに最適な一冊だと思います。