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(最終更新日:2019年10月30日)

技術の深さ

技術者にとって技術の深堀りは自然な行為なので特段の記載は不要かと思います。次々に発表される技術や論文について、その新規性・有効性・信頼性を中心に理解を深め、自社・自分に足りない要素技術や視点があればその点留意し、研究開発・技術研鑽に取り組むといった方向性です。これは極めて自然な方向性なので、この記事では主に『高さ』に注目したいと思います。

技術の高さ

もう少し言葉を足すと、ここでの高さは『技術活用の視座の高さ』のことです。この点についてはデータサイエンス系の技術導入支援をしていても、なかなか軽んじらているように感じることがあります。軽視パターンは2つ。一つは深度の深い技術者が高さを軽んじるケース、もう一つは深さは無くても高くはなれるだろうという技術軽視型楽観主義のケースです。

まず前者。技術を究めればその活用は自ずと見出されるといったケースもあるのかもしれませんが、むしろ技術が深まるほど専門家の罠に嵌ってしまうというのが、昨今の偽らざる共通認識ではないでしょうか。その為、専門家であればあるほど、実は深さよりも高さを意識しなくてはいけないはずであると。しかし、これは年齢によって技術者も役割が異なってくるのが普通なので、チームで解決すれば良いとも考えられると思います。特に20代で深堀りしないのは大変勿体ないでしょうから、若い技術者に対して『高さ』をやたらと強調する組織はそれはそれで気を付けましょうというか、危険な組織だと思います。

次に後者。技術系論文は技術者が読めばよいという誤解というか態度が酷いケースに稀に遭遇します。技術系論文にある『有効性』への記述は事業部側でこそ吟味のしがいがあります。技術系論文を読む際に、 HOW(技術)は一旦脇に置いてWHYの視点から読む。つまり、なぜこの技術がこの会社では進めることができたのか、マーケットニーズとどう合致したのか、組織構造・人間関係の視点から特記すべき点は無いかといったこと、データ収集とコアビジネスの関係性など、これらは技術的深さが無くても考察できますし、この考察をやらなくては勝負にならないと思っています。そうやって技術系論文に慣れるなかで、徐々に技術背景にも迫れるようになります。人工知能学会誌、日経ロボティクス、計測と制御、数理科学あたりは事業部門でも読みましょう。技術者にはできない読み方をしましょう。技術者が深さに走る傾向を逆手に取って、あえて高さに拘る読み方を追求しましょう。 技術者にとって最高のパートナーになれると思います。論文はたくさん読みましょう。量質転換以外に道はないのではないでしょうか。

深さと高さの関係

両者の関係はシンプルにシーソーのイメージだと思います。技術活用の視座の高さが高まるほど、必要となる技術の深さは深くなります。技術が深まるほど技術の活用シーンを拡げることができます。それだけです。最も不幸な関係は、技術詳細については技術者が理解していればよいといった態度を持つ者の『高さ』が制約になる状況です。機械学習の要素技術が何たるかを全く知らないのに、AIブームは終わるだろうなどという批評は誰でもできます。しかしこれは何も付加価値を生まない態度ではないでしょうか。逆に、視座の高さは技術リーダーシップの源泉となります。技術視座の高いリーダーには技術活用提案が自然と舞い込むでしょう。

技術活用視座を高めるために

技術の深堀りのための学習は多くの方がイメージする通りだと思います。機械学習であれば、グローバルビジネスで英語が要求されるのと同様に、統計学やプログラミング能力が要求されでしょう。では、高さを高めるためにはどうすべきでしょうか?

結論としては、非技術者の方であっても、ジャンプする前にしゃがむ感覚で深さ追求の学習を一度挟む道が結局は近道だと思っています。正直、職位が上がるほど、今更技術の勉強などできるかと思われるかもしれません。ただ、もしそう感じてしまうようであれば、技術を見下している訳ですから、技術から果実は得られないでしょう。お金で買った範囲(社員であれば外注であれ)の果実が精一杯かと思います。

ちなみに、NOKIAのCEOは半年間で複数のオンライン講座を学習したそうです。別にコーディングはしなくても良いです。既存のコードに対しコメントを入れるだけでも良いと思います。技術書を最低5冊程度買って目次研究するだけでも良いでしょう。基礎概念は目次で重複します。新しいトピックは目次の変遷を研究すればわかります。研究していれば知らないのが気持ち悪くなって自然と調べるようになります。その自然な飢餓感を頼りに学習を重ねれば良いと思います。Twitterで最新トピックをトレースできるようにする、Youtubeでチャンネル登録してく、Facebookグループに申請する、やらなくてもKaggleコンペを定期的にチェックするといった地道なアクションは無料でできます。ここら辺をやらずに何をやるべきか悩むというのは、何もしたくないという宣言と何が違うのでしょうか。

技術者の方々がデータサイエンス系の技術の高さを高めるのは、技術者としての価値観、能力、環境にもよると思います。キャリアサバイバビリティのためにやらざる得ないケース、技術リーダーシップの強化に取り組みたい方々、最新の技術習得に集中している将来有望な方々。実に背景は様々だと思います。技術の深さ追求だけでは生きていけないのが通常パスだとは思うのですが、技術者の方々が高さを武器化する時期は自ずと明らなんだろうなと勝手に想像しています。いずれにせよ、深さと高さを備えた組織戦でビジネスに勝つしかないですし、是非とも勝ちたいですね。組織戦のためには自分の役割を超えて、立場を超えて、常にオープンマインドであれれば最高だなと思っています。

技術活用視座を高めたい方へ

先述の論文誌以外にも推薦図書を掲載しておきます。NOKIA復活はコンペティティブ・インテリジェンスの題材としても非常に興味深いものですが、今回是非参照して欲しいのは405ページからの『結論:運は自ら切り開くもの』です。グローバルCEOが機械学習とどう向き合ったかが簡潔に記されています。真ん中の『データ起動型企業』は海外におけるAIガバナンスの流れがわかります。ホワイトカラーの意思決定がどのように自動化されていくのか、この分野は日本企業が特に弱い領域なので、技術視座を高める素材として是非一読ください。

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