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経験の罠とは

様々な専門領域において、経験年数とスキル水準に私たちが思っているような相関関係は認められていない。例えば、『究極の鍛錬(ジョフ・コルビン、2010年)』によると、以下のようなケースでは専門家の経験年数と能力の間に相関は見られないと言う。

  • 会計士による粉飾発見能力
  • 臨床心理学者が人格障害を判断する能力
  • 外科医による手術後入院期間の予測能力
  • 株式ブローカーによる推奨銘柄の選定能力
  • 保護監察官による累犯予想
  • 大学の入学審査官による入学願書の評価能力

更に、以下では相関がないどころか、経験年数とスキルには負の相関があるようなのです。

  • 経験を積んだ医師の方が経験の浅い医師に比べて医学知識が少ない!
  • 内科医は時間の経過とともに心音聴診やレントゲンに基づく診断能力が低下する。

なぜ、経験の罠を紹介するのか?

それは経験の罠に相当する事象発見のための取り組みは、分析対象として面白く、同時に企業の生産性向上に直結する可能性が高いからです。どんなに経験を積んでもスキルが伸びていないということは、無理に専門家の業務にしておく必要はないかもしれない(技術による代替可能性)ですし、専門家のパフォーマンス強化の余地があると考えられます。

あなたの会社の専門家について、彼ら・彼女らの経験年数と共に当然上達すると思われる能力に関する「常識」を10個程度書き出してみましょう。そして各項目ごとに検証に必要なデータ、調査対象範囲、評価指標の定義してみましょう。こういった分析設計を通して、解析データが整備されるだけではなく、昨今のデータサイエンス技術、機械学習技術の新たな活用可能性が見出すだけの、アナリティクス能力が涵養されていくでしょう。

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